5月19日(日)、東京・四季劇場[秋]にて「昭和の歴史三部作」一挙上演の第1弾『ミュージカル南十字星』が開幕しました。
劇団創立60周年記念としてお届けする「昭和の歴史三部作」は、戦争の悲劇と、その中で生きた人々の儚い運命、そして切なる平和への祈りが込められた劇団四季オリジナルミュージカルです。戦争の実相を、淡々とリアルに、時の流れの中で忘れ去られつつある人々を主人公に描き出した舞台は、上演の度に、あらゆる世代のお客様から大きな反響を呼んできました。
その一挙上演の皮切りとなる『ミュージカル南十字星』は、真偽を問わず罪を着せられ処刑されたBC級戦犯の人々を題材に、学徒出陣としてインドネシアに送り込まれ、無実のうちに処刑される京都大学の学生・保科 勲を主人公とした物語です。
開演前のミーティングでは、振付を担当した加藤敬二と初演から保科を演じてきた阿久津陽一郎から「一回、一回を丁寧に全力で」、「今年は、日本とインドネシアの国交樹立55周年という大変意味ある年。一つ一つの言葉をしっかりとお客様に届けていきましょう」と、重みある言葉がカンパニーに語りかけられました。
舞台の幕が上がると、そこはインドネシアの悠久たる田園風景。ミュージカルでありながら無音の中で繰り広げられる肉体の躍動に、これから始まる物語の緊張感が高まっていきます。
太平洋戦争前夜、保科とインドネシア独立運動指導者の娘である留学生リナが京都で育んだ淡く美しい恋は、戦争の中で悲しい運命をたどってしまいます。
インドネシアを植民地統治してきたオランダ、アジアの解放という大義を掲げつつも石油資源の簒奪を目論み進軍する日本、真の独立を志すインドネシアの人々。それぞれの思惑が交錯する中で、再会した保科とリナは、人間らしさを失うことなく真っ直ぐに愛を育み続けていきます。リナが歌い上げるインドネシアの愛唱歌「ブンガワン・ソロ」。ジャワ島最大の川・ソロ川を歌ったこの歌には、この地で生きる人々の故郷への想いが込められています。その郷愁を誘う切なくも澄んだメロディーに、お客様は耳を澄ませて聴き入っていらっしゃいました。また、インドネシアの神獣バロンの舞や火祭りでの華麗な民族舞踊は、エネルギーに満ち溢れ、伝統文化の奥深さを私たちに伝えてくれます。
しかし、そんな豊かなインドネシアの文化の中で育まれた愛も、日本の敗戦によって幕切れの時を迎えます。終戦後、インドネシアの独立を願って解放軍の中に身を投じる保科の義兄・原田。そして、インドネシアの独立には義兄の存在が必要だと罪を被り、戦犯として処刑される保科。夜空に輝く南十字星の下、最愛の人リナを想い、そして未来の日本を想って語られる保科の最後の言葉に、客席は静かな感動と涙に包まれました。カーテンコールで送られた盛大な拍手は、皆様がこの舞台から多くのメッセージを受け取ってくださった証であることでしょう。
戦争の悲劇を真正面から描いた「昭和の歴史三部作」『ミュージカル南十字星』は、6月1日(土)まで上演いたします。皆様のご来場をお待ちしております。
『ミュージカル南十字星』東京公演
四季劇場[秋]
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